【庄鉢庄】どうしてもっと早く生まれなかったと、どうにもならないことを僕は考える。あの人を隣で支えられるのに。
もし私が女だったら、一も二もなくあの子に好きだと言えただろうに。あの子の気持ちに応えてやれただろうに。
(ああ、でももしそうなら)(きっとこうして逢うこともなかった)
【庄鉢庄】どうされました、と問えば、何も、と膝に頭を置いたまま先輩は応えた。「なんでもないよ」と楽しそうに言って笑う。先輩が笑うと僕も嬉しくなった。「もう少ししたら動いて下さいね。足が痺れちゃいますから」「これも鍛錬だと思ってー」ふわふわの鬘を撫でると、先輩はまたふふっと笑った。
【双忍】僕はお前のことが好きなんだよ、と雷蔵は言う。ああ困った、私は私が好きではないのだ。自分のことが好きなら、雷蔵とお揃いがまた一つ増えたのに。「そんなの関係あるもんか」雷蔵はあっけからんと言う。「僕は好きだよ。お前が嫌いな分、それよりずっと、大好きだ」だから大丈夫だろ、三郎?
【庄鉢庄】大切なものは守りたいんです、と少年は言った。貴方は僕の大切な人ですもの。ありがとう、と何とか返せた。「でも、私が当分、君を守るよ」「すぐに追いついて見せますから、安心して下さい」それで安心出来ようか!言葉だけでも嬉しくて、にやにやしてしまいそうなのを、何とか堪えた。
【庄鉢庄】君が笑ってくれるだけでいいんだ、と鉢屋先輩は言う。私だけに笑ってくれたらもっと幸せ。短く呟かれた言葉に僕は笑う。「そんなことですか?」「そんなことじゃないさ、私には大事なんだから」「いくらだって笑って差し上げます」だって僕は、貴方を幸せにしたいんですもの。(貴方の愛)
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