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2024/09/29 09:13 |
感情に、終止符【庄鉢】

“酒に酔って理性を失っている鉢屋が庄左ヱ門と絡み、泣きながら「好き」と抱き付いてくるような鉢受を書きましょう”
診断ですら庄鉢を出す運の良さに動揺を隠せません。





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集めたプリントを土井先生に提出して部屋を出た。
ちょっと遅くなってしまった。伊助は多分先に寝てしまっているだろう。
(起こさないように、静かに)
出来る限り足音を消して自分の部屋の前まで戻ったところで、上級生長屋の方から人の話し声が漏れているのに気付いた。
珍しい。どんな音だって聞き取れてしまいそうな静寂があの場所の常なのに。
庄左ヱ門は何度か行ったことのある五年長屋を思い出しながら思う。
「しょーうちゃん」
唐突に目の前に現れた委員会の先輩は寝着姿だった。
いつもなら口角を持ち上げる彼はふにゃんと笑う。不破先輩かと見間違うほど。
「鉢屋先輩。こんばんは」
「相変わらず庄ちゃんったら冷静ね?」
先輩が近付くとお酒の匂いがふと香った。呑まれたようだ、と庄左ヱ門は見当をつける。だとするとこれは酒盛りの音なのだろうか。
「酔い醒ましですか?」
「んーん、足音が庄ちゃんのだったから」
くすくす笑いながら撓垂れる先輩の体が、何だかぐにゃぐにゃしているなぁと感心しながら(まだお酒は飲んだことがないのだ)、庄左ヱ門は呼び掛ける。
「先輩?」
廊下の真ん中だというのに庄左ヱ門は尻餅をついて座り込んだ状態になってしまった。
ぎゅうぎゅうと苦しいほどの力を込めて抱き締められる。
「ふふ、しょーちゃん好きー」
「僕も好きですよ」
「……うん。好き。大好き」
抱き付かれた腹のあたりからじんわりと温かい。
やっぱり酔っ払っておられるのだ、きっと明日はいつも通りなのだろう。そう思うと何だか勿体ない気さえした。
「そんな格好で廊下にいたら風邪を引いてしまいますよ」
精一杯力を込めて抱き起こす。
酔っ払っている人の体は熱くてぐにゃぐにゃしている。覚えておこう。
「…どうして泣いておられるんですか」
庄左ヱ門は驚いて声をあげた。
ぼろぼろと琥珀色の瞳から涙を落として、泣き声も出さず彼は泣いていた。
浅葱色の制服に涙が滲んで濃い色に変わる。
「…好きだよ」
庄ちゃん、と震える声で紡がれたのは、間違いなく己の名だった。
好きなんだ。ごめんね。
繰り返される言葉を反芻しながら、庄左ヱ門は指で零れ続ける彼の涙を拭う。
雫は熱く、触れればすっと温度を失った。


感情に、終止符

(ああこの人は もうずっとずっとながいこと、たったひとりでないていたのか)



酔っ払い三郎回収のために雷蔵が来てひょいって担ぎ上げる。力持ち。
おやすみ、早く寝るんだよ。僕がちゃんと連れて行くから安心してね。
次の日起きたら二日酔いで頭を抱えながらもいつも通りの先輩がいて、庄ちゃんはああやっぱりそうだろうなって納得してしまう。
…続かない。


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2011/07/21 21:58 | RKRN(小噺)

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