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2024/09/29 09:16 |
ぼくのあいする【庄鉢】

庄ちゃんと、三郎のおはなし。
4年後捏造も含まれていますので、ご注意ください。


宜しければ追記から!




拍手[14回]



こんな緩やかな日々が、ずっと続くとは思っていなかった。ただ、ずっと続けばいいという漠然とした願いだけはあった。
「シルエット」 島本理生


僕より四つ上の先輩に、鉢屋三郎という人が居ます。
猫のように気まぐれで、優秀なのに悪戯ばかりする人です。学級委員長委員会の先輩でもあります。
五年生でありながら誰も本当の顔を知らない変装の名人であり、天才。後輩としてはこの上ないくらいに誇らしい、自慢の先輩です。
大切な…うん、一年は組の皆と同じくらいには。
僕の、大切な人の一人です。


「今言ったことを決めて来るようにね」
庄ちゃん。他のどの先輩よりも親しげに、彼の人は僕の名前を呼ぶ。
はい、と応えると必ず良い子、と(時折ちゃかしながら)頭を撫でてくれた。
多分先輩にとっては何でもないことなのだろうけど、僕はそれが嬉しくて頑張れる。
優しい声の呼ぶほうへ、僕は間違えず進める。
「庄ちゃんはあったかいから、私専用の火鉢だ」
体が一瞬宙に浮き、膝の上にすとんと下ろされた。
先輩に抱き抱えられてくすぐったいような気もするけど、恥ずかしさよりも嬉しさが勝った。
体温が伝わってくる、そんな距離においてもらえるのが嬉しかった。
「もー何言ってるの鉢屋、」
尾浜勘右衛門先輩がくすくすと笑う。
そう笑う彼も彦四郎を膝に乗せている。
「私は寒いの嫌いなんだよ」
「暑いときも同じこと言ってたじゃない」
汗で変装が流れたなんて格好悪いだろう、と鉢屋先輩は答える。
「…今は火鉢ですが、いつか必ず鉢屋先輩をお守り出来るようになります」
ぷっ、と一呼吸おいて先輩方二人が吹き出した。
僕は真面目に言ったのだけど。強く、大きくなりたい。
「期待してるよ庄ちゃん!」
あはは、いつまで待つのさ鉢屋、気の長い話だね。いくら庄左が優秀でも卒業しちゃうよ。
彦四郎は目を白黒させているようだ。
脇の下から腕を入れられて、僕の腹の前で先輩の指は組まれている。
(……卒業、してしまわれたら)
委員会でだって、鉢屋先輩に会うことは叶わない。
吐息を感じられるほどこんなに近くにいても、遠くに感じる人だというのに。
(早く追い付きたいのに)
僕の小さな手のひらでは何も掴めないし、守れない。
この人の大事な両腕も、美しい指の一本さえ。


「卒業して四年も経とうと云う生徒に“お遣い”を命じるのはお止め下さい、学園長先生」
ずず、と一見すればただの老人はお茶を啜った。
「お前だから頼んでおるのじゃろう、鉢屋。茶は?」
「どうぞお構い無く」
差し出されたお茶請けだけ、口に含む。甘い。
他人に出されたものを疑いなく食べることが出来るなんて学園内だけだ。
「お前の可愛がっていた、黒木庄左ヱ門。優秀な子だの」
「…当然ですよ。私の後輩ですからね」
澄ました顔で答えると、何が面白いのか学園長はくつくつ笑った。
相変わらず、食えない。

地獄のようないつまで続くのか分からない、腐りきったこの世の終わりみたいな生き方に光を与えてくれたあの子の手は温かくて、血を浴び死臭と腐敗の染み付いた私の手を綺麗だと云った。
この手は自分を苦しめ恐怖を抱かせ、人を惑わし殺め傷付けるだろう。
それでも、この手は人を生かす手でもあるのだと教えてくれたあの子は、未だに死への昂ぶりを忘れられぬ私を見たら何を告げるだろうか。
きらきら光る大きな瞳でこちらを見上げて、せんぱい、とあの子は私を呼んだ。鉢屋三郎先輩。そう、決して目を逸らさず。
屋根の上を吹く風は優しい。目を閉じて、風の匂いを嗅ぐ。血で煙らないそれは新緑の匂いがした。
出会いよりも、別れが多くなったのは、いつからだろう。
何人手に掛け、いつから数えるのをやめただろう。
…ねぇ庄ちゃん。
はい、と応える声を思い出しながら。仄かに赤い頬が、あの頃から私には眩しかった。
「私は汚いよ」
六年生になったなら、あの子ももう、人を殺しただろう。
きついことも辛いことも、たくさんたくさんあっただろう。
私の知らないところで。
懐かしい気配が、目の前に立った。
「汚くありません」
ぎゅ、と随分大きくなった手のひらが私の手を包み込んだ。
あの頃腰あたりにあったはずの目線は、私の上にあった。
だけどきらきらと輝く瞳は変わらなかった。この場所もこの子も、何も変わらない。
「先輩は、凄く綺麗です」
相変わらず冷静で、腹が立つほど現実的な少年はそう言い切った。
「…いつも冷静な庄ちゃんらしくない見立てだ」
彼は目を細める。
「恋の山には孔子の倒れ、ですよ」
私は笑みを作ろうとして、泣き笑いになった。
何が天才だ、笑うのはおろか泣くことだって上手く出来やしない。
「庄ちゃん」
「はい」
名前を呼ぶと、確かな声が返ってくる。
その声が、瞳が、私を導いてくれる。君の光がずっと変わらず。
「…ありがとう」
あの。
そう言いかけ、真摯な眼差しは私を映した。
「僕は貴方に受けた恩を返したいのではなくて、もちろんそれもありますけど、貴方が好きだから、力になりたいんです」
視線で焦がされそうだな、とぼんやり思う。それも悪くない。
「大好きで、大切だから、傍にいたいんです」
口吸いをしても宜しいでしょうか。
くそ真面目な顔で確認を取って、だけど掴んだ手を放す気などない。
「そういうことは尋ねなくて良いんだよ、黒木庄左ヱ門クン」
目だけで笑って、同じような面持ちで返してやる。
「承知しました。以後気を付けます」
「…いい子」
熱い指先が涙を拭うように私の頬に触れた。
ああ、違う、触れられたところから熱くなる。
「鉢屋先輩、好きです」
言葉ごと流し込むつもりなのか、言い終える前に口は塞がれた。
(やっぱり庄ちゃんったら冷静ね!)
言葉でくらい茶化していないと、全て持って行かれそうになる。
私がやれるものなんてちっぽけな矜持とか、本当にそれくらいしかないけれど。
「ずっとずっと好きだったんです。これからもずっと、大好きです」
庄左ヱ門はちょっと照れ臭そうに、年相応の表情で笑った。
恐ろしい忍たまだ。
この鉢屋三郎が、全くかなう気がしない!

僕より四つ上の先輩に、鉢屋三郎という人が居ます。
猫のように気まぐれで、優秀なのに悪戯ばかりする人です。学級委員長委員会の先輩でもあります。
忍たまだった頃から誰も本当の顔を知らない変装の名人であり、天才。後輩としてはこの上ないくらいに誇らしい、自慢の先輩です。
僕の大切な人の一人であり、

ぼくのあいする

(独りぼっちで、寂しがりな、たったひとりの愛しい人です)




 

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2011/05/25 23:10 | RKRN(小噺)

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