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2024/09/29 09:20 |
さあ、もう一度言って。【鉢尾】
鉢尾の甘酸っぱさは異常…尾鉢じゃないです鉢尾です…!たぶん……






拍手[6回]






「鉢屋の口吸いは甘い気がする」
真面目な顔をして、勘右衛門は言った。
甘いものばっかり食べてるしさ。
三郎は筆に墨を含ませながら呆れた声を出した。
「……またくだらないことを……」
「くだらなくないって!だって甘いんだよ?凄くない?」
凄くない、とあっさり三郎は言い返す。
勘右衛門は頬を膨らませた。
「鉢屋は俺への態度がなおざりすぎるよ!」

大体委員会の勧誘の時も、そのあともさ。
言い返すかと思ったのに、言い返してほしかったのに、三郎は何も言わない。
決まっているとかなんとか言って、委員会のことなんてそれっきり口に出さないし。確かに、俺と鉢屋は俺が思ってるほど仲良くないかもしれないけど。
腹が立ったので口をきいてやらないことにした。
書類を整理して、書付をいくつか済ませて、鉢屋の方に押しやる。もちろん黙ったまま。
そのままの状態で一刻過ぎたころ、鉢屋が溜め息を吐いた。
なんだよ、溜め息吐いたくらいで話してなんてやらないんだからな。
目があったらつい話しかけそうになるので、顔も見ないように文机も動かしてある。完璧だ。
「……らしくないことを言うぞ。私はお前と綺麗なものを見たり、甘いものを食べたり、くだらないことを話すのが、嫌いじゃない」
鉢屋は意地っ張りで、矜持が高くて、自分から謝ることなんて絶対にない。
(俺が女の子だったら、もっと簡単に好きって言ってくれたのかなぁ)
俺がいくら好きって言ったって、鉢屋はかたくなに言わない。うまく躱されてしまう。
顔を貸していたら、馬鹿なことを一緒にして笑えたら、もっと優秀だったら。俺の方がうんと年下だったら。
柔らかくて甘い匂いのする女の子だったら。
「お前が好き、だからだ」
「え、」
予想外の言葉につい振り返ると大仏の頭があった。でかい。
いやそうじゃなくて。あ、話しちゃった、まあ良いや、やめよう。今は鉢屋だ。
「ちょっと、何で隠れちゃうんだよー」
大仏の頭は話さないし動かない。本当に恥ずかしいならこの場からいなくなればいいのに、妙なことで抜けてるのだ、鉢屋は!
「俺すっごく嬉しいのに!ねぇ鉢屋ーはちやってばー」
鉢屋は応えない。だけどもう一度言ってほしい。
(だって鉢屋が、俺のこと、好きって言った!)
にやにやしてしまうのを我慢しながら大仏に向き直る。
「………さーぶろっ」
ばっ、と鉢屋は雷蔵の姿になってこちらを見た。顔が赤い。あ、照れてる。
手を伸ばして、首にしがみつく。おい勘右衛門、裏返った声で鉢屋が叫ぶけど離さない。
「へへ、捕まえた!」
俺を映す瞳が揺らいで、別に逃げやしないと呟いた。
(お前は逃げるのがうまいよね。でも残念、俺は捕まえるのが得意なんだ)


さあ、もう一度言って。

(そしたら俺も言ってあげる!)


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2011/07/31 03:02 | RKRN(小噺)

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