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2024/09/29 09:16 |
天才の血の色【尾+鉢】
尾鉢尾も、尾+鉢も好きです。なんだかんだで、5いと三郎は仲が良い気がして。






拍手[4回]


尾浜勘右衛門という奴は、いつも唐突である。
「お前、天才って呼ばれるの嫌いだろう」
五年長屋のろ組部屋、三郎の目の前にやってきて、やはり唐突に言った。
「嫌な奴なんているか?」
「鉢屋」
不思議そうな顔をして勘右衛門は答える。
その癖、考え無しという訳ではなく、的を得ていることが多いので質が悪い。
「そう呼ばれるのを私は誇りに思ってるさ」
「誇りに思ってても嫌なことなんてあるんだ。だから何も書かないで答案出して、零点取ってお説教?」
「それのことか」
げぇ、と三郎はうめいた。
学級委員長というのは一応組を束ねる立場にある。
真面目にやれば学年一位をかっさらう奴が堂々と白紙の答案を出せば教師も怒る。
さっきまで散々お説教をされていた身だ。
「天才と呼ばれて良いことなんてないだろう、鬱陶しい」
観念したように吐き出して、三郎はごろんと横になる。
「い組の学級委員長様に何か関係があるのか?」
「大有りだよ」
唇を尖らせ、木下センセに同じ委員会として注意しろって言われるしさぁ、と勘右衛門は眉根を寄せた。
「何より、鉢屋がお説教を食らうとおやつが遅れる。最悪、食べ損なう」
学級委員長委員会の活動のことだ。
「…それは悪いことをした。庄左と彦に」
「俺にもだろ!」
勘右衛門が肘でつつくと三郎も笑う。
「兵助がつまらないって言ってた。学年統一試験だったのに鉢屋の名前がない、きっと受けてないんだって」
三郎が居ないとつまらないのだぁ、と兵助の言葉だ。い組の秀才にここまで言わせて、目の前のこいつの点数は零点である。
「…ふん、勝手な豆腐小僧だな」
ほんのりと目元が赤かった。
あ、鉢屋、本当に嬉しいんだ。
「で、よく見たら呼び出されてるんだもんなぁ」
優秀者一覧の他に、呼出、と真っ赤な字で貼り紙があった。
「目立って面白かっただろう?」
「変なところで馬鹿だよねぇ、鉢屋は」
たくさんの面を付けて、誰にも素顔を見せないで生きていく。
(そのために誰よりも巧く自分を騙す鉢屋三郎という奴を、俺たちは大切に思っている)
努力家だからな、あの天才は。
そう言うと兵助は目を細めて眩しそうに笑った。
「誰が馬鹿だ、誰が」
お前は努力を見せずに何でもやってみせるから、嫌なこともたくさんあるだろう。されたくもない評価を色んな人からされるだろう。
だけど、天才なんて雲の上の人間みたいな言葉は似合わないよ。


天才の血の色

(だって天才でも馬鹿でも、友達なのに変わりはないだろ?)



 

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2011/06/23 01:03 | RKRN(小噺)

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