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2024/09/29 11:28 |
等身大のわたしを、【利鉢】

わたあめのような利鉢、という響きが好きです。殺伐も好きです。驚きのマイナーさ!





 

拍手[5回]



「相変わらず見事な変装だね。あの子はもっと火薬の匂いがするけど」
自分の変装が完璧だと思っているわけではないし、日々精進、だが。
あっさり言い当てられて、褒められたって嬉しくはない。
山田利吉さん、山田先生の実の息子だ。あまり接点はないけど。
立花仙蔵先輩の変装を解いて、常の不破雷蔵に戻す。ああ面白くない!
「どーも…」
「はい、これ」
包みが掌に落とされた。ほんのり甘い香りがした。
「何ですかこれ?」
「お土産だよ」
ああ、と合点する。お菓子だ。
「は組の子たちに渡しておきますね」
「君に、だ。甘いもの好きだろう」
ぽかんとして彼の顔を見上げる。
「そりゃ、好きですけど」
なかなかどうしてずっしりと重い。結構な量がありそうだ。
「じゃあ食べればいい」
何で知ってるんだろう。というか、この人は甘いもの苦手じゃなかっただろうか。
ともかく、あの子たちが喜びそうだ。一番喜ぶのは多分勘右衛門だろうけど。
「じゃあ利吉さんも用事がすんだら学園長先生の庵に来て下さい。委員会の皆で先にお茶しておきますから。うちの後輩の点てるお茶は美味しいですよ」
眩しそうに目を細めてこちらを見ていた売れっ子忍者は、急に挙動不審になった。
めったに動揺なんてしない人だから、何だか試されてるような気になる。
「…ああ、じゃあそうしようか、」
「どのくらいかかりそうですか?山田先生ですか、それとも学園長先生に」
御用でしたか。言いかけた言葉はそのまま飲み込むことになった。途中で遮られて。
「ないんだ」
「はい?」
何がないんだ。時間だろうか。
首をかしげると、自分の首の後ろに手をやりながら利吉さんは俯く。
「用事なんてないんだ。強いて言うなら君に会いに来たというか」
言いながら、かぁっと首筋まで赤くなった。
「なっ…」
それにつられてこちらも赤くなる。
「自分で言っておいて照れないでください!」
ごめん、と彼は笑う。そんなに簡単に謝られたら、怒った私が馬鹿みたいじゃないか。
「…大体、あなたは私より大人で、いつだって余裕で」
「だってそれが、私が君に使える唯一の武器だから」
大きな掌が頬に触れた。
「まあこの通り、本当は全然、余裕じゃないんだけどね」
私が甘えたくらいでは揺らぐ人じゃないから、つい甘えが出てしまう。
「嘘ばっかり」
嘘じゃないよ。いいえ、嘘です。
何度かそんなやり取りをして、私は唇を尖らせた。
「いつも一目で見破られると、少なからず自尊心が傷付きます」
それは譲れない、と利吉さんは言い切った。優しいのに芯のある声で。
「だって、好きな子かどうか分からないなんて恰好悪いだろう」
どうしようもなく子供で、貴方に何かしてあげるようなことなんてできない。


等身大のわたしを、

(好きでいてくださいますか)


 

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2011/06/24 01:45 | RKRN(小噺)

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