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2024/09/29 10:33 |
なんでやねん!【ジャンベル風味】
◆れもんちゃさんと合作させて頂きました。ライベル編に続きます。
Pixivにて繋がった状態でみれます(下のリンクより)
【http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3188362】
関西弁山奥可愛い!個人的には東北あたりの方言がいいなって思ってます! 


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なんでやねん!


立体機動装置を扱う演習の班というのはやっぱり成績上位者が班長になるわけで、いくら第三位とはいえ積極性のない彼のそれが免除されるものではない。むしろそれさえなければ優秀なのだから、協調性だとかリーダーシップだとか、そういうものを鍛えるべく編成されているのだと思う。今のところ効果はないな、と自分のことを棚上げしてジャンは思った。自分の性格が軋轢を生みやすいのは承知の上、直す気もない。ベルトルトは膝を抱えるようにして長椅子に腰掛けたまま一言も発していなかった。普段彼が指示を仰ぐライナーが班長を務める演習班は別行動である。キース教官のことだから、絶対にわざとだろう。きっとこれは指揮官適性審査であり、養成訓練だ。
「何とか言えよベルトル ト。自分より成績が低い班長とは話したくねえってか?」
「おい、ジャン。言い方」
同じく班長のマルコは呆れた声でジャンを諌める。マルコの班に編成された連中は安心だろう。班長というのはこういう優秀なくせに馬鹿みたいなお人好しがなるべきものだ。
「へいへい、お前は相変わらず良い子ちゃんだな」
「お前ねえ」
ジャンが唇の端を吊り上げればベルトルトは慌てたように姿勢を正す。手を伸ばす為だろう。長い足が床に着いた。
「で?」
「ちゃうねん」
ベルトルトは広げた地図の上に指を置きながら滑らかに言った。冗談を言う雰囲気ではないし、ベルトルトの冗談なんてそもそも聞いたことがない。
「チャウ……ネン……?」
ぎぎぎ、と壊れた人形か何かのようにベルトルトはジャンから視線を逸らす。耳どころか首筋まで赤い。
「……違うんだって」
「今訛ったよな?」
「ううん」
ふるふる。首が横に振られる。誰が信じるんだ今完全に訛ってただろ、と同期の鳶色の目が語っている。
「訛っただろ?」
「訛ってへんよ!」
声がひっくり返った上に、語尾まで完璧に上がっていた。隠す気があるのだかないのだか、一度口に出てしまうと誤魔化すのは難しいようで。このままではまた一人だけ浮いてしまう、とベルトルトは焦る。ジャンはそんな彼に白い目を向けたまま、「……この配置に異論は無いんだな?」と確認した。
「せやな、ええっと」
せ、の音が何とも文字では表し難い。「せ」と「そ」の間で、絶妙な発音である。真似出来ないくらいだ。語尾も上がっているし、もはやどうして認めないのだかジャンには分からない。詰まるところ、ベルトルトも引くに引けないだけだった。訓練とはいえ演習の為の打ち合わせは大事だし、抜けるわけにはいかない。
最後のまとめに入ったあたりで「何でそんな訛ってんだよお前、山奥の村では皆そうなのかよ?」と笑いながら訊ねられたところでベルトルトの我慢は限界を迎えた。
「ライナーの奴も訛るのか」
「……やからそこは先にジャンの班が行ったらええやん!知らんけど!!」
「知らねえのかよ!」
「そうやない!」
「ああ!?」
兵団104期生の中でも何をやらせても3本の指に入る積極性ゼロの彼は珍しく大きな声を出した。ジャンの口が悪いのは今に始まったことでもない。悪人面も。
「それも訛りなのかよ!?訛ってんじゃねえよ!!」
「あほ!ジャンのあほ!もうええ!ライナァアア!!」
椅子から立ち上がり、小さく叫んでベルトルトは走り出した。 吃驚するほど足も速い。
「誰がアホだてめえ!!」
ジャンの馬面どあほ、と遠くで響く。もうええと叫んだベルトルトだが、どうやら全く良くはないのだった。
「……ちっ」
ジャンは立ち上がりかけたが、追い掛けなかった。隣で愉快そうにマルコが笑っているから、というのもあったし、打ち合わせがほぼ済んでいたからでもある。
「……ジャンはあれだな、好きな子ほど苛めちゃうタイプだよな」
「ああ?」
誰が好きな子だよ、としたり顔の親友に返す。分かってるだろ、と地図を畳むマルコは不機嫌な声も全く気にしなかった。


最終的に散々からかった関西弁パンデミックに巻き込まれることになるジャンなのだが、今はまだ知る由もなかった。


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2013/12/21 02:49 | 進撃(SS)

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