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2024/09/29 10:23 |
君にとどめ【エレベル】
静かに狂う二人の話し。●ネタバレ・捏造・原作程度のグロご注意ください● 

バースデーリクエストで頂いた【殺伐としてて救われない感じのR18Gでエレベルセッ】になります。メリバかもしれない。
エレベルは背中合わせ。お互いだけは見えない。 
 
 

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「恋人ごっこは、楽しかった?」
高らかに言葉を紡げばエレンは僕を目に映す。ぎらぎらと金色に光る狩人の眼。
「……てめえ」
「前の日に抱いた相手を殺そうと斬りかかっていたって知った今の気分は?ねえ、教えてよエレン」
アニもライナーも使命すら失って、力尽きてしまって、もう何も出来なくなった僕は、エレンを煽る。ここで死んでしまいたかった。この子ならきっと、僕を殺してくれる。


「…………ベルトルトの、嘘吐き。死んじまえ。いや、違うな。殺してやる」


そうしてくれたら、良かったのに。
両手を拘束されたまま、僕は身動きが取れない。十分に慣らされていないままなのに、血のせいでどろどろにぬかるんでいるそこが押し入ってきたエレンの昂った芯に纏わりついていく。
「……うう……っ、く、ん……おえっ、う、ぅう」
内臓を押し広げられる感覚に頭がじんじんと痺れて、痛くて、気が遠くなる。腹を裂かれたときに痛みなんてもう感じなくなったと思っていた。痛いのは慣れっこだった。ただ牢に満ちた自分の血の匂いは噎せかえるほどで、気持ちが悪い。胃の中は空っぽだし、とっくの昔に胃液を吐き出すだけの力もなくなっている。
(殺してくれたら、良いのに)
なかなか気を失えないのは僕の中でエレンが動くからだ。視界はぐらぐら揺れて痛くて突き上げられる度に吐きそうになるのにエレンの熱を体内で感じると意識を逃がせない。痛くて気持ち悪いだけの生々しい行為のはずなのにエレンが熱くて、それが切なくて嬉しいのだと身体が啼く。かり、と耳殻を噛んだエレンは傷痕を舐めた。そういえば同じようにして一度噛み千切られたのだったか、と思い出す。
囚われてからの僕はぼんやりしている時間の方が長い。兵士を演じていた頃みたいに現実逃避をするのは本当に少しだけ幸せだった。
「俺はお前の長い脚は強くて、かっこよくて、綺麗で、好きだったな」
対人格闘訓練のときなんか特に、とエレンの弾んだ声がぼんやりしたまま僕の中に入ってくる。声の方に顔を向けると猫のような瞳がきゅ、と笑った。一つ下の少年はゆっくり僕の脚を下から上へとなぞる。随分と血を失った僕には温かい指先だった。耳の奥で脈打つ鼓動が体中を支配しているような感覚が四肢に満ちる。

「でも、もう要らないよな、脚なんて」

ああ、ああ!
僕の所為だ。中途半端な僕の所為でこの子はこんなに壊れてしまった。
(何も言わないでいたはず、だったのに)
強くて優しい戦士のライナーや、誰よりも強く在ろうとしたアニが壊れてしまったんだから、それはきっと当然のことだ。
僕が。ぼくがいけなかった。

両脚を抱えられて深く突かれるのと同時、思考が焼き切れて目の前が真っ白になった。







野菜を切るようにざくざくというわけにはいかないな、と思う。食事当番は苦手だろうが得意だろうが順番に回ってくるもので、人参を持ったジャンがやたら同期にウケて怒っていたり、マルコが味見をするのがいやに似合っていたりした。そういえばアニは野菜を切るのが巧かった気がする。
(…………ベルトルトの誕生日、だ)
誕生日に脚を奪う。超硬質ブレードを使ってベルトルトの脚を切り取る作業は淡々としていて、ぼんやり思い出に浸ってしまうくらいだ。時折骨に当たっても、人間の骨なんて何でもないように斬ることができる。人の形をした害獣とは違って、巨人になれる人間を切るのは初めてだった。ライナーを殺したのは俺ではない。まるでただの人のような血生臭さが鼻を刺激する。ベルトルトは気を失ったままだ。拠り所を失った俺の好きな人は静かに、だけど確かにゆっくりと壊れていく。

(逃げないように。どこにも行かないように)

俺は馬鹿だった。周りの見えない馬鹿な子どもで、ベルトルトのことは何も知らなかった。考え方や、事情や、故郷のことだって、何も知らなくても問題はないと思っていた。だって、俺は俺の好きに自信があったから。何も出来なかったくせに。

「……ライナー?ライナー、どこ?くらくて、さむくて、こわいよ。どこにいるの。らいなー」

何をされても喋ろうとしなかったベルトルトは身体以外の部分がゆっくりと壊れて、時折ライナーを呼ぶようになった。
ベルトルトを詰り、殴り、乱暴に抱いて、それ以外のときはぼんやりしている時間が増えた。
許せないのに。好きだったのに。好きなのに。
「ううう……っ、ん……」
ぼろぼろと涙が落ちる。ベルトルトは泣き虫だ。
「あっ、ぁあ、い、いや……っあぁあ!」
何も聴きたくなくて、喉を潰す。爪の間に入ってくる肉片が気持ち悪かった。首を落としてはいけない。殺してはやらない。
乱暴に広げられたそこは容易に指二本を受け入れている。ぐちぐちとベルトルトを濡らすそれが血なのか体液なのか、俺にはもう分からない。ひゅうひゅうと呼吸音が響いた。濡れた性器を咥えこむと胸を大きく波打たせたベルトルトが腰を弓なりに反らして痙攣する。踏ん張るための脚がないから、俺にしがみつく。俺もベルトルトも全身血塗れで、爪の間に入った肉片が取れないままで。それでも温かい身体が気持ちが良くて、それが本当に腹立たしい。





ライナーから教えられて初めてそれを知った俺は、日付が変わるのと同時にベルトルトのベッドに飛び込んだ。ぼふっ、と思っていたよりも大きな音が部屋に響いたけれど、誰も文句は言わなかった。皆同じくらい騒いでいるからだ。
「誕生日おめでとうベルトルト!生まれてきてくれてありがとうな!」
「……び、びっくりした……ありがとう、エレン」
ベッドの主は膝に本を抱えたまま目を丸くして、俺と目を合わせる。
「でもその言葉は、もうしばらく、とっておいてね」
「何でだよ?」
「……ふふ。すぐに分かるよ」
ベルトルトは灰色の瞳を伏せて小さく笑った。笑ってくれたのが嬉しくて、俺は腰のあたりに抱き付いた。身長のわりに薄い身体に柔らかさはなくて、その代わりとても温かかった。
「でも、ありがとう。君から貰った言葉、ずっとずっと大事にする」
「……大げさな奴だな。そんなん何回だって言ってやるし、祝ってやるよ」
皆に知らせてベルトルトを祝ってもらおうと、俺は立ち上がった。


夢を見た。懐かしい夢だ。
あのときの俺はそれがどんな気持ちで吐き出された言葉かなんて、考えもしなかった。

(エレン)

あのときと同じ泣きそうな声で、ベルトルトの唇が俺の名前を紡いだ。正気に戻っては、赦しを乞おうともせずベルトルトは「殺して」と俺に懇願する。だから殺してやらなかった。出来るだけ苦しめようと思っていたから。やっぱり許せなかったから。何人がお前の所為で二度と誕生日を祝えなくなったと思う?

だけど、殺すなら。何度だって祝ってやるよ、といつかの俺が笑った。正気を保っているときにしてやるべきじゃないか。

「ベルトルト、また今年もプレゼント用意し損ねちまった」
ベルトルトはゆっくりと首を横に振る。要らないよ。そんなふうに。
「考え方が違ったら、勝負しようって言ったよな。俺はお前たちと勝負して、勝った」
だからお前を殺すんだ。でも大丈夫。いつになるか分からないけど、俺も死ぬから。ちゃんと死ぬから。お前だけ独りぼっちで殺しはしない。だって、俺は巨人だ。
「考えたんだ。やっぱり巨人はこの世から一匹残らず駆逐してやる」
はくはくと血塗れで喘ぐベルトルトに囁けば、「その言葉はお前を殺すのに」とジャンは檻の向こう側、疲れた顔で笑った。知ってるよ。分かってるんだ、そんなことは。それでもいいんだ。それがいい。
「そもそもお前が俺の忠告を聞き入れたことなんてなかったな、そういえば」
アルミンと交代でベルトルトを閉じ込めた檻を見張ってくれていた同期生は溜息を吐く。俺以外の誰かがこいつを殺さないように。俺がさよならをできるように。目の下の隈はくっきりと黒く、昔からずっとそうだったように馴染んでいた。ジャンはひらひらと手を振って檻の前から離れて地上への階段を上る。

俺とベルトルトは正しく狂ったまま、ふたりぼっちだ。

「ありがとう、エレン、ころしてくれるんだね」

ひゅう、と俺が喉を潰したお蔭でベルトルトの声はほとんど音を成していなくて、それでも言葉はきちんと俺に届いた。
両脚はなく、腹は裂けたまま、喉の修復に力を回したのだろうと知れた。このままならばどの道ベルトルトは死ぬだろう。俺が何もしなくても。
深い夜色の目が細められて、そっと閉じる。人の肉に刃が食い込む感触と血の匂い。人殺し。ひとごろし。

「誕生日おめでとう、ベルトルト」


君にとどめ
止めを刺したのは、どちらだろう。
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2014/01/11 01:11 | 進撃(SS)

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