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2024/09/29 09:18 |
不器用カルテット【ライジャン+マルベル】
自分のことには不器用な4人の話し。

現パロでライジャンとマルベル、お約束の品!です!
公式設定程度のライ→クリとジャン→ミカ要素がありました(玉砕済)。

▼ライベル・ジャンベルジャン・マルジャンマル・ライマルなどを含む作品と共通の萌え設備で製造しています。山奥親友(オールリバ)の勢いで好きです。

拍手[3回]




◆ライナーのこと



ライナー・ブラウンという男は、すこぶる優秀であった。
まず、勉強が素晴らしく出来る。学年では次席だ。体育の実技でもトップクラスの成績を誇る。
見目も良い。精悍な顔立ちと金髪、鍛えられた身体、同じ男の目から見ても羨ましいほどのものだ(おそらく肉体美といっていい)。
極めつけは、人格者である。冷静かつ気のいい性格で、責任感も強く、面倒見も良い。同級生をはじめとして仲間から厚く信頼されるリーダー的存在だ。高校生とは思えない。


繰り返すが、男である。


ちなみに、ジャンの初恋はミカサという、寡黙な黒髪の美少女だった。学年主席、幼馴染のエレンにぞっこん。出会って数十秒でほぼ失恋が確定したものの、諦めはしなかった。
ライナーはジャンと同じく、高嶺の花であるクリスタを好いていた。遠くから眺めたり、何かしてもらっては「結婚しよ」や「結婚したい」と呟き、体育の時間に女子と合同で練習があれば喜び勇んでペアを組に行きユミルに返り討ちにされていた。お前はまだ高校生だろうとか、そもそも結婚できない年齢だろうとか、細かいことは気にしてはいけない。ライナーは至って本気である。

片想い仲間として、ライナーとジャンは助け合う関係にあった。

ジャンがとうとう2年越しの想いをミカサに伝えてきっちり玉砕したときは(跡形も残らなかった)、家まで押し掛けて来てなんやかんやと世話を焼いた。ライナーがやれ林檎を食うか、やれ風呂を入れてやろうかと騒ぐので、だんだんと悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなってしまった。曲がりなりにも初恋だったのに。
「お前人のこと心配できる立場かよ!さっさと家にかえってクリスタのこと想い返しながら寝ろ」
親が出張中なのを良いことに失恋で学校を休んだやつの言うセリフではなかった。かっこわるい。
「……俺も、クリスタに告白したぞ。玉砕した」
「はあ?」
ライナーが焦って告白するようなことは、なかったはずだ。
「成り行きで、告白して、まあ。見事にフラれたわけだが」
「待て待て待て」
ライナーは計画的な男であったし、ジャンの記憶している限りロマンチストだった。初デートは某ネズミの居る遊園地だとか、告白は夜景の美しい高台の公園でだとか、薔薇の花束とエンゲージリングを用意してだとか、とにかく映画とドラマとゲームを全部足して良いとこ取りしたようなプランを練るような男だった。
それが、成り行きだと?
「次のエイプリルフールにはまだ早ぇぞ。もう午後だし」
「ユミルに言われてよく考え直したんだが、俺はお前と居るときの方が楽しい」
お前それはユミルに体良く誤魔化されてんだよ、とは、言えなかった。その可能性は勿論あるだろうが、ユミルはクリスタに関して全身全霊で全力投球だ。嘘は吐かない。
「そりゃ男同士の方が一緒に居て気は楽だろ」
加えて、ライナーはとんでもない頑固だった。こいつの幼馴染で流されるままに生きているような男が居るのだが(長いものには巻かれっぱなしである)、それを引っ張ってきたライナーはおそろしく頑固に育ったらしい。他人の意見は聞き入れるのだが、自分の意見を捨てたのをジャンは見たことがなかった。
ライナーはジャンの手を両手でしっかり握りしめる。
「ということで、ジャン、来週末は遊園地に行こう」
目の前に居るのは男で、金髪で、可愛いというよりは格好良い奴である。
「て、手ぇ離せよ。ひとまず」
「あ、ああ、すまん」
ジャンは自分の嗜好を分析し、黒髪で黒眼が好きなのだろうと思っていた。
握られた手からじわじわと熱が上る。恥ずかしい。たった今、そうでもないらしいことが判明した。

何がどうしてこうなったのだ。



◆ベルトルトのこと



ベルトルト・フーバー。
オレやジャンと同じく、成績上位者の推薦進学を希望する同級生だ。身長は192センチ、オレよりもはるかに高い。非常に優秀で3本の指に入るほどの実力があるのだけど、自分の行動を他人に委ねる悪癖がある。
何を隠そう、オレの好きなひとだ。


図書室のテーブルでオレとベルトルトは向かい合って座り、机の上の予定表を睨んでいた。
「困った」
「困ったね……」
オレの言っている「困った」とベルトルトの「困った」はおそらく違うものだろうけど、そんなことはどうでも良い。
おそらく、ベルトルトの問題はジャンとライナーが片想い玉砕というビッグイベントから一気に初デートまで漕ぎ着けたことだ。困ったというより、びっくりのほう。オレも予想していたよりはやいからびっくりしているけど、オレの問題は予定が重なったこと。
「同じ日だろ」
「同じ場所です」
オレの確認にベルトルトは申し訳なさそうに身を竦める。
ライナーはきっと此処に行くと思うんだ、ライナーが好きだから僕もこの遊園地なら詳しいよ、と嬉しいのと嫉妬を半分ずつくれたデートプランだった。貴重な、ベルトルト提案の、デート。当初の名目ではライナーのデートプランのための下見、だけど。
「……ライナーは絶叫系好きだっけ」
「うん、わりと」
「じゃあ三大マウンテン制覇は狙うと思う。ジャンが一緒ってことは、デートとは言え楽しむだろうし……オレたちはモンスターズと、バズと、ハニハンで……」
一生懸命ルートが被らないように考える。入場券を買う段階で鉢合わせしてしまいそうだけど。
「マルコ、詳しいね!」
ベルトルトは眼を丸くした。ベルトルトは可愛いもの好きだろ、と、子どもが多いだろうコースを組み立てながら言えば「うん」と頷いてはにかんだ。かわいい。何とかしよう。
(……あの二人はなんだかんだでくっつくに決まっているんだから)
ジャンにコースを入れ知恵することに決めて、オレは笑った。
オレにはベルトルトを口説く大事な使命がある。
そもそも月に1度のペースで開かれるライナーとジャンの為の作戦会議、これ自体がデートの誘いであるとベルトルトに気付かれていない可能性が高い。かなり高い。
「先は長いなあ……」
目が合ったベルトルトはにこ、と首を傾げた。深い緑色の瞳が眩しそうに細められる。
うん、オレは頑張るよジャン。お前のためにも。



◆ジャンのこと



ジャン・キルシュタイン。
オレの優秀な友人である。成績上位者の推薦進学を希望していて、成績上位入りはほぼ間違いない。性格に表裏は無くて、思ったことは言ってしまう。正直なのに損な性格だ。身体能力も高く、現状認識能力に長けている。


「……マルコ。俺は大変なことに気付いたんだ」
「これがたまたま順番待ちしてるときに会った親友の発見じゃなかったらもっと喜んで聴いたんだけど続けて」
見事に待機列で鉢合わせた。午後になるまでは何とか回避できていた、はずなのだけど。
「俺、ミカサは初恋だったかもしれないけど、ライナーのことがずっと好きだったみてえだ……」
かあ、と効果音がつきそうなくらい顔を赤くして俯くジャンは可愛らしい。だけど、少しだけ冷たい声になってしまうのは許して欲しい。オレもデート中じゃなければもうちょっと優しく出来たと思う。ジャンのことは好きだ。親友だもの。
「だろうね。っていうかだから恥ずかしがってベルトルトと場所代わったのか!?」
「知ってたのか!?」
背の高いベルトルトは早々にジャンとライナーに見つかった。合流するのと同時にジャンがベルトルトに場所を変わるよう言ったので、押しに弱いベルトルトはなぜかライナーの隣に居る次第だ。どうしてこうなった。
「ジャン……お前ってやつは……」
「だって気付いたばっかりなんだよ!」
溜息を吐くと悪いとは思っているのか、申し訳なさそうに小声を張り上げる。
「その現状を正しく認識できる能力で現状把握して欲しいんだけど」
ジャンは鳶色の眼をライナー、ベルトルト、オレの順番に移した。
「……お前、前髪切ったか?」
うん、切ったけども。そうじゃなくて。
ジャンの現状認識能力はライナーのおかげで緩みっぱなしだった。いつものジャンであれば、オレとベルトルトが二人で遊園地なんておかしいだろうとか、覗きに来たんじゃないかとか、言われなくても考えつきそうなものだ。大体お前、嫌な相手だったら遊園地なんて一緒に来ないだろ。

恋とは恐ろしいものである。



◆マルコのこと



マルコ・ボット。ジャンの友人だ。
気が優しく、細やかで、寛容でありながら洞察力に優れている。成績上位者の推薦進学を希望する同級生で、ジャンの親友であるあたりからいかに人間が出来ていて見る目があるか分かる……と、俺は勝手に思っている。女子からも人気があるらしい。

待機列に2人並んでいるのを見つけたときはとても和んだ。マイナスイオンが発生していると考えて間違いない。滝だ。
「ベルトルト、ちょっと代われ」
ジャンはぐいと長身の同級生の腕を引っ張り、自分の場所に収めた。
「そのまま待機な!」
「えっ、ええ?」
手を挙げて挨拶をする。マルコは少し離れたところからこちらに手を振った。ジャンが走り寄って行く。ベルトルトはおろおろと俺とジャンを交互に見ていて、マルコまで気を回せていない。


マルコはたぶん、ベルトルトが好きだ。


「すっ、すっごい偶然だねライナー……」
ベルトルトの眼は完全に泳いでいた。嘘を吐きながら喋る、ということがこいつには出来ない。きっと何年かかったって無理だ。
二人はきっと、デートに来たのだろう。
マルコならば泣き虫で言いたいことは半分も言えないようなベルトルトを引っ張ってくれるだろうし、邪魔をしてしまった。ジャンはマルコとべったりなので(ベルトルトは自他共に認める俺にべったりだが)、マルコのことが好きなのかもしれない、とすら思っていた。お父さんに許可を得る婿のような気持ちで接しなければならない。なったことはないが。
「なあベルトルト」
「な、なあに」
「マルコとは仲良くしろよ」
マルコはきっと、お前のことが好きだからな、と心の中で呟く。こっそり応援してやろう。大事な幼馴染であるベルトルトを任せてもいいくらいに、俺はマルコを信用している。
ベルトルトは頭上からじっ、とこちらを見つめた。深い緑色の瞳。
「ライナーも、ジャンと仲良くね」
……仲良く。
ダブルデートという単語が脳裏をよぎる。想像だけで照れて、考えるのをやめた。



◆不器用カルテット



「ベルトルト」
僕は身長の所為でやたらと目立つ。名前を完璧に覚えてもらえないのにも定評があるけど、192センチという身長はなかなかお目にかからない。長時間同じアトラクションの待機列に居たら見つかるに決まっていた。しかも相手はジャンとライナーなのだ。
きっとマルコは気を遣ってくれたのだろう。こういう気遣いが本当にありがたいし、なかなか真似できない。
「もう1回オレと乗ればいいよ。それで時間をずらそう」
ひそひそと少し屈んだ僕にマルコが耳打ちする。こくりと頷けば「じゃあまた後で」とジャンのほうに戻って行った。
ライナーとジャンには幸せになって欲しい。
ジャンがミカサを好きなのもおそらく、ライナーがクリスタを好きなのと同じように叶わないと分かっているからこその初恋で。それでも告白して、当たって砕けた二人は凄いと思うけど、本当に好きなのはお互いなんだろうなあ、と観察して思う。二人共気付いていなくて、僕とマルコの方が気付くのは早かった。
ライナーはジャンのほうをみてそわそわしている。この調子だとライナーとジャンももう1回同じものに乗って、また待機列で会ってしまう気がした。言わないけど。ジャンのほうを見たまま手をぐっぱっと動かす幼馴染は、僕をいつも引っ張ってくれる大事な人だ。手くらい繋げるといいね、ライナー。
(頑張らなくちゃ……)
マルコとは協力関係にある。
本当に貴重なことに、マルコと過ごすのは居心地が良かった。僕は人見知りするし、自己主張ができないし、積極性は全くない。無理強いされずにリードしてもらえる、というのは快い。
毎回計画を立ててもらうのが嬉しかったり、色んなところに行くのは恥ずかしかったりもするのだけど、マルコにそんなつもりはないだろう。親友のジャンのためだもの。
(……なんだかデートみたいだ、なんて)
冗談でだって言えやしない。
昨日の夜まで楽しみではしゃいでいた事実を思い出すと顔が熱くて、取り出したタオルハンカチに顔を埋めた。



自分に関すること以外は、よく分かる4人だった。





✿閲覧ありがとうございました

✿ランドの主に会ってハグしてもらって喜ぶベルトルトを眺めながらも続いてキスもしようとしたところで静かに怒るマルコも居ましたが、ライジャンメインなのでカットされました
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2013/09/06 00:00 | 進撃(SS)

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