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2024/07/03 17:44 |
君が毒【まごつぎ】

伊賀崎孫兵×次屋三之助、
孫次検索による孫次郎との競合を防ぐため、「まごつぎ」表記となっております。


無自覚な方向音痴と、毒虫野郎の好きの話し。


 

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彼の暖かさや温もりや優しさは自然のそれと酷似している
爽やかな晴天であり傷を隠し癒す曇りであり愛しさを知る雪でありそして時に依存を赦す雨でも ある



大事な友だちのお墓を作った。
裏裏山のずっと奥、誰にも気付かれないようなところ。

そう思っていたのに。
がさがさと騒がしい音に続いて、草むらを掻き分け、三之助が顔を見せた。
「おお、孫兵」
僕の顔と周辺をみて察したのか、草むらから抜け出た三之助はそのままそっと僕の作ったお墓に手を合わせた。
毒虫は卵から一生を通じて毒毛針を持つ。何であれ目立つ姿形だから、飼われているのだと知らない誰かからは攻撃されて殺されてしまうことも多い。
「……傷だらけになって死んでしまった」
「傷付いたのは、生きたからだろ」
どうやって此処まで来たのとか、また迷子なのか無自覚なんだから、とか、言いたいことは全部飲み込んでしまった。その代わり、孫兵もそうだよ、と唱えられた言葉に涙が溢れた。もう散々泣いて、枯れたと思ったのに。


僕は最近、三之助から目が離せない。何をするわけでもない、組も違うから授業では会わないし食堂や校庭で見かける程度の同級生から。
目が合えば孫兵、と名前を呼んで笑ってくれるから、それだけで十分に嬉しかった。それがなぜかなんて考えたことも無い。考えてもきっと分からない。
「……三之助は」
言葉なんて覚えなければ良かった。きっと覚えていない頃の方が、よっぽど上手に伝えられた。
言葉にする前に感情が膨れ上がって、その気持ちが大き過ぎて、口から出てこなかった。僕の気持ちは喉のあたりに詰まってしまった。
言いたいことがまとまらない。ぼんやりとこちらをみている三之助に、僕は色んな言葉を伝えたかった。
「孫兵?」
気が付いたときにはつい、目で追ってしまっている。ジュンコが肩に居てもだから、これは由々しき事態だ。
どうしよう、と三之助にそのまま相談したら孫兵は馬鹿だなあとあっけからんと言われた。そんなこと気にしなくていいよ。俺も孫兵のことが気になるけどいつもいつも通りに過ごして頑張ってるもん。
「ああ、ほんとに、君ときたら!」
僕の気持ちなんて、三之助にはきっとお見通しで。
「ん。きらい?」
「好きだよ」
だってきっと、これが僕の好きの気持ちだ。

君が毒
(だから、約束をしよう、君にも僕の毒をあげる!) 


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2013/04/30 00:00 | RKRN(小噺)

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