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2024/07/03 18:01 |
惚れた弱み、なのだろう。【庄鉢庄】
ヨヨ様へ、リクエストありがとうございました。遅くなって申し訳ありません!
1万ヒットの御礼になります。

今年2度目の三郎の日に、愛を込めて!


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察しておくれよ花ならつぼみ 咲かぬところに味がある
(作者未詳)


鉢屋先輩、一緒にお茶をしましょう。
礼儀正しくそう言って腰かけた庄左ヱ門は姿勢も良く、いつも通り目元が涼しい。
「……あの、庄左ヱ門さん?」
「なんでしょう鉢屋三郎先輩」
どうしてそうなったの、と首を傾げて。
「茶は養生の仙薬なり。延命の妙術なり、と申します。先輩には長生きして頂きませんと、困りますから」
「それはまたどうして」
「大切なので」
重ねて問うたものの、答えに窮した。千の顔を持つ鉢屋三郎ともあろう者が、一年生相手に何と応えたらよいか分からなくなった。
「それは……ありがとう」
「彦四郎と尾浜先輩も直にいらっしゃると」
当然のことだ。大勢の中の一人だ、それはそうだろう。この子の「大切」は沢山居る。たくさん、たくさん。これからもきっと増え続けるのだろう。
そうか、と自分を誤魔化すように笑えばひたと真っ直ぐな視線がこちらを見つめた。
「先輩は特別ですよ」
「……庄左ヱ門、君はずるい。先輩をからかうのはよくない」
正論を振りかざしてみる。からかうのは私の十八番だ。からかわれるのは慣れない。
「鉢屋先輩にだけは言われたくありません。鉢屋先輩は、ずるいです」
「おや。年上はずるくて臆病なものですよ」
「だけど、ずるいから好きです」
ようやく、笑えた。しばらくは、ずるい先輩のままでいたいんだ。ごめんね。
「ふむ。ずるい私が好きな庄左ヱ門、お花見をしながら外でお茶というのはどうだろう?」
「構いませんよ、ずるい僕が好きな鉢屋先輩」
忍たまの友を机の上に綺麗に並べて、後輩はゆっくり立ち上がった。
先輩相手にあんまりな言い草である。
(それでも、言い返してやろうという気が起きないのだから、これはきっと)


惚れた弱み、なのだろう。


「どうしたの鉢屋、機嫌良いね」
「良く見えるか?」
我らが学級委員長委員会委員長代理は楽しそうにふふんと笑った。
「うん。庄ちゃんと何かあった?」
俺は頷きながら花見に使う傘をくるりと回す。
「大したことじゃなかったんだが」
「うん」
花霞が風で舞う。花びら。薄い紅色。
「あの子が好きだなあと思ってな。それだけだ」
「……それ、本人に言ってあげればいいのにぃ」
まだまだ、と笑う鉢屋の首筋は仄かに赤く。
「鉢屋の意地っ張り」
「ええいうるさい、お前が言うな」

「庄左ヱ門?どうしたの」
大きな荷物を持って先に歩く先輩たちを、庄左ヱ門はじっと見つめた。
尾浜先輩の持たれた傘が、日差しの所為か目を射るように紅い。僕もお茶の道具を持っているので前が少し見にくいけど、見たところ特に異常はなさそうだ。
「相手が一枚上手だなあと思って」
「相手?」
はちやせんぱい、そう小さく続けられた言葉に将棋か何かのことだろうか、と思う。鉢屋先輩の強さはよく知られている。
「遊んで頂けるうちが花だからね。からかっているつもりでからかわれているんだと思うけど」
「……お前が何を言ってるのかさっぱり分からないことがある。今とか」
「気にしないで」
気になるに決まってるんだけど。
庄左ヱ門が日に日に鉢屋先輩に似てきている気がします、と尾浜先輩に零したら「彦ちゃんも俺に似てみない?」とからかわれた。
この人たちときたら、全くもう!


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2013/03/26 00:00 | RKRN(小噺)

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