【鉢尾】良いのか、私は優しくないぞ。鉢屋があんまりひっそりと尋ねるので、どんな内緒話かと思った。「何だ、そんなことか」「そんなことって」「優しい人が良いなら鉢屋なんて選ばないよ、今更だな」失礼な、と自分で言っておいて鉢屋は笑う。本当は優しいの、俺は知ってるしね!
【庄鉢】言葉や方法を覚える度に、伝えたいことが言えなくなって。ああ、こんなことが言いたかったんじゃない、そう思いながら、それすら。「鉢屋先輩」好きだから、好き。大事なことはそれだけで、貴方が信じてくださったら、僕はそれだけで良いのです。「大好きです」
【鉢こへ】これを私は恋とは認めていないけれども、そうだな。恋だとするならば、恋のいいところは、廊下を歩く足音だけであの人だって分かることだろうか。そう笑って三郎は立ち上がった。目方だけでなく誰かまで分かるらしい相方は「行ってくるよ」と戸を開ける。鍛錬らしい。
【鉢こへ】私は化け物扱いされるのにすっかり慣れていたので、人間扱いされて驚いた。無理はだめです、ご自愛ください、と後輩は笑う。どうしてそんなことを言う。私は他の奴らみたいにするの、得意じゃないんだ。「私が大事にしたいので」いつもは我が儘なんて言わないくせに。
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